
「ねぇ、このままここに住むのもアリかなって思うんだよね」
何気ないその一言に、心の中がザワついた。
彼が富山へのUターンを決めた一つの理由は「両親が生きているうちに親孝行をしたい」だった。だからこそ、彼が「このまま実家に住む」という選択をするのは当然の流れだと正直に思った。
彼を愛してる。でも、それと「私もこのまま実家暮らし」は、別の話。
このままだと、何かがジワジワ壊れていく気がして―
自分の中でモヤモヤと色々な感情が溢れ出してきた、今日はそんな日のことを書いてみようと思う。
このままじゃ、まずいかもしれない。
ある日、静かに、そう思った。いや、認めた。
それはドラマチックな事件が起きたわけじゃなくて、ほんのちょっとした、でも確実な“違和感の積み重ね”だった。
最初は、「まぁ一時的なことだし」と思っていた。
だけど



“一時的”っていつまで?
っていう話。
彼がポロッと口にした「このままここで暮らす?」という言葉。
もしかしたら、地域おこし協力隊に落ちて沈んでいる私を気遣ってくれたのかもしれない。
でも一瞬、フリーズしましたよね。ええ。



「……ここで?って、ご実家で、ですか?」
あれ? 私だけが“同棲生活”の夢見てた…?
どんな立場でここに居続けたら良いの…?
なんだか、ひとりだけ違う方向を見ていたような、そんなズレを感じて、軽くショックだった。


だけど、お義父さんもお義母さんも本当に素敵な人たちで、大好き。
それがまた、ややこしい切なさを呼ぶのです。
わたしも「結婚にはこだわっていない」と思ってた。
彼は、結婚に対して完全に懲り懲りだった。
「もう誰とも結婚はしたくない」「紙切れの制度には縛られたくない」そう思う彼の過去もその彼の意志も、私はちゃんと知っていたし、その上でお付き合いもスタートさせていた。そう、ちゃんと理解していた。
いや、理解していた“つもり”だった。
私自身も、バツ2。
もし、この年齢で“真実の愛”に出会えたなら、三度目の結婚もアリかもしれない…そんな淡い希望はあった(はい。ありました。。。)けど、正直結婚に対しては色々疲れていた。アプリでの恋活・婚活にもくたびれて、「真実の愛って、そもそも何?」と分からなくなっていたし、すぐに結婚を急いでも、また失敗するだけ。
だから私は、まずは“形式にこだわらない愛の形”を大切にしたいと思っていた。
ちゃんと向き合って、ゆっくり育てていく、そんなパートナーシップ。
……そう思っていた。はずだったんです。
「奥さんですか?」に答えられない日常。
ふたりの関係を聞かれたときの言いよどみ。
役所の手続きで「続柄」の欄に名前が載らない違和感。
会う人会う人に「奥さんですか?」と聞かれたときの、謎の敗北感。
……どれも小さな出来事。だけど、わたしには地味に、じわじわ効く。
私たち、毎日一緒に寝て、食べて、笑ってるのに、関係を聞かれたときに感じる、なんとも言えない感じ。
自分の存在があいまいで、ちょっと居た堪れない気持ちとでもいうのだろうか。



「これはいったい何?」
結婚にもこだわっていない。結婚してるつもりもない。
だけど、「結婚していない」ことで、じわじわ傷ついてる自分にある日・・・気がついた。


「ご夫婦ですか?」と聞かれたときも、彼が「いや、ちがいます」って即答したあの瞬間、なんだろう、胸の奥にざらっとした何かが残った。そんなつもりじゃないのは分かってる。でも、顔で笑っていてもちょっと泣きそうになる瞬間、あるよね。
同棲=彼の実家、って想定外すぎる。
私、勝手に思い描いてたんですよね。


ふたりで借りた部屋に、愛犬が走り回ってて「このソファ、ちょっと高いけど可愛いよね?」なんて言いながら選んで、スーパーで一緒に特売の鶏むね肉をカゴに入れて、「今日はカレーにしようか」なんて夕飯を決める、そんな暮らしを。
とりあえず、とりあえず富山への移住も急だったし「彼の実家での生活は、二人で住む家が決まるまで」・・・
彼のご両親には申し訳ないけれど、地域おこし協力隊に受かるまで彼のご実家にお世話になろう。。。
そう思っていたんです。
ところが蓋を開けてみたら、決まるはずの仕事も私は決まらず、そして二人の家も決まらず。
気づけば、二人の同棲生活ではなく・・・彼のご実家に同居という不思議な居候生活。
もちろん、彼のご両親はすごく優しくて、素敵な人たち。
それだけに、余計に申し訳なくて。
幸せ・・・だけどちょっと切ない・・・
今まで如何に”自分と自分たちのこと”しか考えていなかったと言うことに直面する。
籍を入れていない私が“実家”で暮らすって、思ってた以上に、田舎ではいろんな説明が必要で。
親戚とかご近所さんとか。。。。
「で、この人は何者なの?」っていう視線や質問がふわっと飛んでくる。


彼の「パートナーのToyamarikoちゃんです。」と言う紹介に、相手が「パートナー」と言う冠になんとも言えない表情をしている時などに、複雑な気持ちになったのは、ここだけの話。
…あれ? 同棲生活って、こんな予定だったっけ?
って、夜ふと天井見ながら考えてたら、涙が出そうになったのもまた、ここだけの話。
そして、お義母さんのつくるご飯がやさしくて泣けるし、お義父さんの「おかえり」って声があたたかくて、
「この人たちに迷惑をかけたくない。悲しませたくない。」と、心から思ったのも本心。
大好きな人の家族が大好き、って、幸せで、ちょっと切ないんですね。
彼のご両親は本当に優しさに溢れていて、ありがたい環境ではある。だけど、どこかずっと“つま先立ち”。
やっぱり「ここで堂々と生活していてはいけない。。。」って。
彼の実家のお父さんもお母さんも本当に素敵な人たちで、大好き。
それがまた、なんとも言えない切なさを呼ぶのです。
私は決めた!愛したいからこそ、まず自分の暮らしを持つ。
“真実の愛”って、たぶん「一緒に住む」とか「籍を入れる」とか、形式だけの問題じゃないと思ってる。
でも、安心して根を張れる場所がなければ、その愛もどこか宙ぶらりんになってしまう。
不安は、疑いを生む。全くもっていまの自分の状態は良くない状態だと思った。
疑いは、自分を守るために出てくるけど、私は守るための恋愛はしたくない。
愛したいからこそ、自分の居場所が必要だ。
私は彼を信じたい。
自分のことも、信じていたい。
だからこそ、まずは「富山での自分の居場所」から始めよう。
それは「彼から離れる」ことではなく、 「彼ともっと自然にいられる関係になるため」の選択。
焦らなくていい。
答えのない関係だからこそ、ふたりで“自分たちらしい答え”を探していけばいい。
この恋を信じているからこそ、焦らず、丁寧に、ひとつずつ、つま先立ちではなくしっかり地に足をつけて歩いていきたい。
アラフィフのパートナーシップって、答えがない。


子どもが欲しいから結婚したいわけじゃない。
世間体のためでも、老後のためでもない。
ただ、「一緒にいたいから、いる」だけの関係。
だからこそ迷うし、悩むし、“制度の外”でどう幸せを築いていくか、模索していく。
周りに答えがないからこそ、自分たちで作っていく。
それって勇気がいることだけど、きっと誇らしいことでもあるんじゃないかな。。
「彼のことが大好きで、信頼してて、でもちょっとだけ寂しくて、不安で、どうなるのって思ってる」
そんな女性がいたら、私は思いっきりうなずきたい。
そして言いたい。
「そのモヤモヤ、めっちゃわかる」って。
急がなくていい。
ゆっくり、ふたりなりのペースで歩いていけばいい。
まずは、自分の居場所から。
次回、第3話は
新しい暮らしを探して、奇跡の物件と出会う…!?
果たして愛犬との再会は叶うのか。
「自分の暮らしをつくる」第一歩が、静かに始まります。
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