富山へ移住してから私が結婚するまでの物語【続・恋と再スタートは突然に。】
いよいよ、あと2話で最終話となりました。
心も体もボロボロでどん底だった私が、思いがけない再スタートを切り、恋をして、人生を見つめ直して…。
笑って泣いて、何度も立ち止まりながら歩いてきたこの物語。
読み逃している方は下記よりどうぞ
第1話:「嫁じゃないけど実家にいます。」
第2話:「愛してる。でも“このまま実家暮らし”は無理かもって思った日。」
第3話:「奇跡の物件と、思わぬ急展開。」
第4話:「引っ越し珍道中!繊細すぎる犬と、泣きすぎる母と、罰金払う私」
第5話:「子どもを産まない人生?閉じていく身体と、もう一度向き合った日」
第6話:家事イヤイヤ星人が富山で味わった“ありがとう”という魔法
その結末は、まさかの展開から始まります。
それは、ひとつの“奇跡”――
突然やってきた「いのち」が、私たちの未来を静かに、そして力強く導いてくれました。
喜びと不安、期待と葛藤、そして決断と別れ。
笑って泣ける?!でも最後はあたたかい光で包まれるような。。。そんな物語を最終話にかけて2話連続でここに綴っていきます。
46歳での自然妊娠。それは「嬉しさ」と「怖さ」の両方だった
まさか、まさか…だった。
46歳、自然妊娠。
ミレーナを抜いて、漢方を飲みながら「どうか子宮さんと仲直りできますように」と、やっと自分の身体を労わり始めたそんなタイミングだった。
月1の定期検診のエコーでわたしの子宮内を見ていた先生が「ん?妊娠してるよ」と。
その言葉を聞いて思わず私の口から出てきた言葉はびっくりしすぎて・・・「マジか!」
エコーで確認しながら「マジ」って答える先生。

まさか、この歳で妊娠するなんて――。
嬉しかった。ものすごく嬉しかった。とんでもなく嬉しかった。
でもその分、不安も同じくらい大きかった。
色んな怖さや不安がこれでもか!ってくらいに押し寄せてきた。
超高齢出産、子宮の病気、これまでの体の履歴。

「本当に産めるのか?」
「この命を守れるのか?」
「自分はもう若くない。何かあったら?」
そんな怖さと葛藤が、喜びにピッタリとくっついていた。
自分の本音に気づかないようにしていた私
実は、それ以上に怖かったのは「彼とどうなるのか」だった。
彼と結婚したいのかどうか。
本当は、もうずっと前からわかっていたはずなのに、私は自分の本音に気づかないようにしていた。
嫌われたくない。
傷つきたくない。
失敗したくない。
私は彼と出会って、「結婚」という言葉をあまり使わないようにしていた。
というより、自分に無意識のうちに禁止していた。
それは、彼が結婚に否定的な人だとわかっていたから。
自信がなかったから。
「この関係が心地いいし」「形にこだわらなくていいし」
「今のままでいい。充分だ。」そんなふうに思っていた、思い込もうとしていた。
彼の気持ちを理解している物わかりの良い賢いオトナの女性でいることに価値を見出していたのかもしれない。
でも、赤ちゃんができたことで、わたしは気づいてしまった。
そう。。はっきりと。
私、この人と本当は結婚したいんだ。
結婚というカタチが全てではないと私は思っている。ただ、わたしたち二人の関係性において「結婚」というカタチが私にとっては一番心地よい関係性だった。


――本当は、結婚というカタチで彼と一緒にいたい。
――本当は、彼と家族になりたいんだ。
――パパとママになりたいんだ。
――優しく温かい家庭がずっと本当は欲しかったんだ。
そうずっと思っていたんだって…気づいてしまった。ずっと見ないふりをしてきた、自分の本音に。
思い描いていた“幸せな展開”じゃなかった
その日、赤ちゃんができたことを私は彼には言えなかった。



「今言ったら混乱させちゃう」
「喜んでくれない気がする」
「『どうするの?』って言われたら答えられない」
怖かった。
拒絶されるのが。
否定されるのが。
私の“本気”を、受け止めてもらえないのが。
そして自分の中で整理して翌朝、勇気を出して伝えた。



「赤ちゃんができた・・・」
その言葉を口に出すのに、あんなに勇気がいるなんて思わなかった。
彼は黙っていた。
すぐに何かを言うでもなく。重たぁーーい空気が部屋中を埋め尽くす・・・
そして一言だけ



「まりちゃんが結婚したいと思ってるなんて思ってなかった・・・よ」
・・・・・・・・・
え???そこ?(怒・哀)
私の心はぐしゃっと潰れた。
私は自分の気持ちを全開にして、差し出したのに。
正直、ドラマみたいな展開をちょっとだけ?いや期待していたんだと思う。


「うそ!?ほんとうに?うわぁああ!!めちゃくちゃ嬉しいよ!」「Toyamarikoちゃん。結婚しよう!」みたいな、あれ。
だけど現実にはそんな展開なんて、どこにもなかった。
もっと静かで、複雑で、なんなら“すごく重かった”。
感情おばけ大暴走!のち、静寂。
期待が打ち砕かれたときの人間ってけっこう怖い。
はい、ご多聞に漏れず私も感情おばけに大変身。
私は勝手に「なんで?なんで喜んでくれないの?」と、とんでもない感情お化けになって泣いて怒って拗ねて…
これはとてもドラマで放送できない展開。
泣く、怒る、責める、黙る、叫ぶ。
人間のありとあらゆる情緒の全ジャンルが総動員して私の中から吹き出した。



「私、ひとりでも産む」
そう言った時、私は本気だった。
でも、心の奥では「結婚して、パパとママになって一緒に二人で育てたい」って願ってた。
ただ、その願いを口にするのが怖くて、強がるしかなかった。
もちろん、今ならわかる。。。
彼は何も考えてなかったわけじゃなかったし、むしろとても真剣に考えてた。
私たちの将来。
この命を迎える責任。
自分の気持ち。
覚悟。
ただ彼の時間軸と、私の時間軸が違っただけ。
今だからわかる。。。。
あのとき、彼は不安だった。怖かったんだ。
でも逃げずに、ちゃんと考えてくれてたんだ・・・と。
私もまた、彼を信じきることができていない自分と向き合う時間だった。
「本当の願い」を口にする怖さ、「期待すること」の怖さ、「愛されたい」と願うことの怖さ――
そして「一緒に人生を歩いていきたい」と願う、自分の素直な気持ち。
すべては、あの“生命”が運んできてくれた。
私たちが、心から本当に向き合うための時間と、選択と、決断を。


続きは、次回――
最終話【第8話】「いのちが運んできた結婚物語」へ。
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